1.家計の見直し 住宅ローンを考える
2.今の給料で住宅ローンはいくら借りられるか?
3.住宅ローンの返済期間をどう決めるのか!
4.住宅ローン金利の仕組み
5.住宅ローン どの金利タイプが得か!
6.住宅ローン どの返済方法が得か!
7.借入先と住宅ローン商品を選ぶ際のポイント
8.融資の要件や審査に幾つもの関門がある
9.フラット35の特徴
10.フラット35と民間ローンではどちらが得か?
11.住宅ローンの頭金(自己資金)はいくら準備すればよいか?
12.住宅ローンの頭金をどう捻出するか?
マイホームの取得は最も大きなライフイベントの一つで、大きな支出だ。これから戸建住宅やマンションなどの購入および住宅ローンを現在返済中で、借り入れや見直しを検討する際、次の項目については是非知っておきたいものだ。
マイホーム取得の検討
マイホーム取得のためには、住宅ローンを利用して、一体いくらの物件が買えるのか?そのために頭金など自己資金としていくら準備しておけば良いのか?などが、最も関心のあるところだろう。
そのためには、先ず現在の家計の収支状況を把握し、将来のライフイベント(結婚、
出産、子供の就学等)に基づくライフプラン(キャッシュフロー作成含む)を立て、収支計画を数値化しておくことが大切だ。詳細なプランの作成が無理ならば、少なくとも大きな
出費項目だけは抑えておきたい。
具体的に、収入面では、給与所得は、手取額(可処分所得額):給与収入-(社会保険+所得・住民税額)、支出面では、食費、公共料金、保険料、衣類代、子供の教育費、
お小遣い等々の経費。
【マイホーム取得のための住宅ローンの検討】
年 収 |
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年間返済額 |
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◆年収額の確認 |
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◆ローン期間の選択 |
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◆借入先の選択と
融資条件 |
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◆自己資金 |
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一戸建住宅/
マンションの選択 |
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◆金利の選択 |
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◆諸経費 |
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◆ローンの借り換え |
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◆繰り上げ返済 |
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◆ローン減税 |
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先ず、現在の給与収入で一体いくらのローンが組めるのかを事前に知ることが肝心だ。
その目安を立てるための手順は次の通り。
◆年収額の確認および年間返済額・ローン金額の上限を知る
住宅ローンを利用する前に確認すべき項目の一つは給料などの年収額だ。これは前年度の税込み年収額で、サラリーマンの場合、毎年会社から受取る給与源泉徴収票の“支払金額”欄に記載されている金額がそれだ。
各金融機関はローン利用者に住宅資金を融資する条件として収入基準を設けて
いる。
この年収額をベースに年間返済額が求められ、更に返済額から、いくら借りられるのか、そのローン上限額が確認できる。
上限額は返済期間や金利などの条件によって異なるが、現在および将来の家計状況に応じ、無理なく返済できる金額の設定が望ましい。
ただし、この上限額は飽くまでも目安として活用願いたい。実際は、年収の水準、勤続年数、購入物件の担保評価、頭金の割合、過去の各種ローンやカード等の返済履歴などの項目を総合的に判断して決められる。
【年間返済額とローン金額の上限イメージ図】
フラット35
財形住宅融資 |
年収400万以上 |
35% |
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年間返済額
(月間返済額) |
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返済期間
+
ローン金利 |
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ローン上限金額 |
年収400万未満 |
30% |
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民間ローン |
年収 |
25% |
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・ローン借入上限額の計算例
例:試算条件(年収500万円、金利2.5%、返済期間30年)
収入基準:35%の場合
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年間返済額の上限 |
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年 収 |
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収入基準 |
年間返済額の上限 |
175万円 |
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500万円 |
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35% |
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月間返済額の上限 |
145,830万円 |
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175万円÷12ヵ月 |
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借入金額の上限 |
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月間返済額
の上限 |
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100万円当たりの月間返済額 |
借入金額の上限 |
約3,690万円 |
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145,830円 |
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(3,951円÷100) |
【借入金額100万円当たりの月間返済額】 (単位:1円)
返済期間 |
10年 |
15年 |
20年 |
25年 |
30年 |
35年 |
金利 |
2.0% |
9,201 |
6,435 |
5,059 |
4,239 |
3,696 |
3,313 |
2.5% |
9,427 |
6,668 |
5,299 |
4,686 |
3,951 |
3,575 |
3.0% |
9,656 |
6,906 |
5,546 |
4,742 |
4,216 |
3,849 |
上の試算のとおり、返済期間が長いほど、また金利が低いほど借入上限額は増加
する。
従って、金利については、公的・民間融資機関によって適用されるレートが異なるので、より低い有利なレートを探すことがポイントだ。また返済期間は、サラリーマンの場合、定年退職年齢の60歳〜65歳までに完済するのが一般的で、これを基準に返済計画を立てることが鉄則だ。
・希望するローン金額に足りない時の対策はあるか?
希望する物件価格に、頭金として預貯金や親などからの援助資金を含めても借入限度額が尚も不足する場合、この対応としては、夫婦のペアローンや夫婦間・親子間の収入合算などの方法がある。
ペアローンについては、夫妻が共働きの場合、夫と妻がそれぞれ独立したローンを組めるが、年収額はそのまま合算できる仕組みだ。
その特徴としては、夫婦それぞれが※連帯債務者となり、団信(団体信用生命保険)もそれぞれが加入、物件は共有名義、また住宅ローン控除はそれぞれが適用可能
となる。
一方、収入合算についいては、ペアローンと同じく夫婦の共働きの場合、年収額は合算できるが夫が主契約者とした時、妻の年収は半額だけ合算できる仕組みだ。
その特徴は、妻が※連帯保証人となり、団信は夫の加入、物件は夫名義、また住宅ローン控除も夫のみが適用できる。ただし、妻が住宅ローン控除の適用を受けたい場合は、妻も連帯債務者、団信加入、物件の共有名義などの要件を満たすことが必要だ。
これらは、一般的な特徴・要件であり、金融機関によって取り扱いが異なる場合があるので、これについて検討する際はより詳細な情報を事前に入手し確認されることをお勧めしたい。
収入合算やペアローンの制度を利用すれば、確かに借入額は増え希望に叶った物件
の購入ができるだろう。しかし、それ以降は長期間に亘る返済が待っているのだ。
この間、年収が減少する負の想定もしなければならない。従って、飽くまでも、
これありきでなく、この方法は最後の手段として考えることが大切だ。
※連帯債務者は一つの債務をそれぞれが独立して責任を負う人のことで、例えば
ペアローンで夫が2000万円、妻が1000万円のローンを合算した場合、その債務額
は夫・妻共にそれぞれ合計額の3000万円ずつ負うことになる。ただし、債権者
にとっては、それぞれの債務者に対し3千万全額の請求権を持っているだけで、
債務額がその倍の6千万円ということではない。従って3000万円全額返済すれば
債務は消滅する。
※連帯保証人は、主債務者本人と連帯して返済義務を負う人で、例えば収入合算
した妻が連帯保証人となった場合は、妻は保証人、夫は債務者の立場となる。
◆住宅ローン期間の選択
年収基準によりローンの借入限度額が試算できたら、次は返済期間をいつまでに
するかだ。
無事ローンが組めても、借入後には長い道のりとなる
‘返済’が待っていることだ。
ローン返済はその期間を長く設定すれば、するほど毎月の返済額が減るので確
かに家計負担は楽になる。
しかし、長期間に亘る返済は、企業の年功序列や終身雇用制度が崩れている
ことに伴い、定年前の転職や早期退職・出向などによる年収の減少リスクも想定
される。返済期間は完済までの先を見据えた資金計画が必要だ。
ここでのポイントは、退職金を出来るだけ返済に充てないことだ。退職金は飽くまで老後資金として残しておきたい。何故ならば、今の公的年金だけで生活するのは厳しいからである。
出来れば、定年時期の60歳〜65歳(継続雇用制度、定年廃止などの導入)までに完済するプランを立てるのが理想的だ。
【年齢によるローン返済期間】
民間ローン |
最長ローン期間 |
完済年齢 |
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35年 |
※〜75歳 |
※金融機関によって異なる。 |
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フラット35
(買取型) |
申込時年齢 |
※@ |
ローン期間の年数上限 |
ローン期間 |
完済
最長年齢 |
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申込時
年齢 |
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年数 |
59歳まで |
15〜※35年 |
80歳 |
− |
◇歳 |
= |
※A
◇年 |
60〜69歳 |
10〜※35年 |
※(年数の上限は@の35年またはAの年数のいずれか短い年数が基準とされる) |
尚、申込時年齢は1年未満切り上げとなる。
年収の50%超の収入合算者がいる場合は高い方の年齢、また親子リレーの場合は後継者の年齢が
それぞれ基準となる。
◆住宅ローン金利の選択
・住宅ローン金利の仕組み(店頭金利と実際の貸出金利は違う)
住宅ローンを組む場合、返済期間と同様にして金利が気になるところだ。要は、「どこの金融機関がより低いレートで貸出をしているのか」であるが、ローンの利用者向けに貸出す金利は金融機関によって様々だ。
金融機関が適用している金利レートは、まず日銀が市中銀行に貸出す際に適用する※政策金利がある。これは、銀行などが金融商品に適用する全ての金利のベースとなるレートで、言わば調達原価のような意味合いだ。従って銀行などがローン利用者向けに貸出す際の金利は、少なくとも理論上、この政策金利(現在0.3%) 以上のレートが適用される。
では、金利のタイプ毎のレートはどのレートを基準としているかというと、固定金利は、10年国債利回や長期プライムレート(プライムレートは最優遇貸出金利のことだが、現在その定義は明確でない)、
変動金利は、短期プライムレートをそれぞれ基準としているようだ。
金融機関は上述のレートをベースに、基準金利を設定するが、実際の貸出金利は、どこも競争力のある金利を優遇金利として提示している。
【民間金融機関のローン金利設定体系】
優遇金利 |
通期優遇型 |
全返済期間に亘り同じ金利が適用される |
当初優遇型 |
優遇幅は当初が大きい |
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基準金利 |
店頭表示金利と呼ばれ、貸出の際にベースとなる金利 |
【参考】
東京三菱UFJ
(2012年11月1日) |
変動金利
タイプ |
固定特約金利タイプ |
当初5年間 |
当初10年間 |
それ以降 |
店頭表示金利 |
2.475% |
3.250% |
3.550% |
その時点の
店頭表示金利
から-1.4%
引き下げ |
引き下げ幅 |
-1.600% |
-2.200% |
-2.200% |
優遇金利 |
0.875% |
1.050% |
1.350% |
・優遇金利の適用を受けるには
上表の通り、優遇金利は、店頭表示金利と比べ、変動金利・固定金利ともに平均して1%から2%強の優遇幅があるため、これを利用しない手はない。
優遇金利を利用するための要件は、各金融機関によってそれぞれ扱いが異なるので利用する金融機関に事前に確認しておくことが必要だが、その金融機関に預金口座を開設し、給与振込先とする、公共料金の振込先とする、定期預金を積立てる、その金融機関発行のクレジットカードを保有、などが一般的な要件とされている。
【住宅ローン金利のベースとなる主要レート推移(参考)】
※出所:日本銀行および財務省発表のデータより筆者が抜粋して表示。
プライムレートは各年間最高値、10年国債利回は各年間平均値、政策金利は年末時点の値を夫々表示。
2012年:プライムレートは7月迄の値、政策金利・10年国債は直近値を表示。
※政策金利は基準割引率、基準貸付利率
住宅ローンの金利は、固定金利、変動金利、金利ミックスが主なタイプだ。
金利を選ぶ際の主なポイントは、下表の通りだが、借入時点で低金利水準が続いている、或は将来的に金利上昇トが予測される場合は、“固定金利タイプ”。
一方、金利が高止まり状態、或は今後金利下降が予測される状況下では、“変動金利タイプ”をそれぞれ選択することが鉄則とされている。
ただ問題なのは今後の金利推移だ。専門家は、金利の上昇や下降または維持などトレンドの予測まではできる。しかし、それが「いつ、どれくらいの幅で動くのか」は、誰も正確には読めない。
今の金利水準を見る限り、例えば国の政策金利は、既にゼロに近い状況だ。
よって今は、金利の底が見えている水準だが、これがこのまま暫くは続くと予測するのであれば変動金利を、今は底で近い将来上昇局面になると予測するのであれば固定金利を選択した方が得策と考えられる。
筆者はFPである立場上、断定的な判断はできないが、更なる金融緩和で金利が仮にもう一段下がったとしても固定か変動かの選択を迷うほどではないと考える。
金利ミックスタイプについては一部の民間金融機関が扱っている。このタイプは、金利の先行きが不透明でどちらの方向に動くか専門家などの予測も二分されているような場合、その割合に応じた固定・変動の組合せとするのも有効かもしれない。
【主な金利タイプの特徴とポイント】
金 利 タ イ プ |
主 な 特 徴 |
ポ イ ン ト |
固定金利
タイプ |
固定金利型 |
ローン契約時に設定された金利が
返済期間中変わらない。 |
借入時点で返済額が分るので返済
計画が立て易い。
低金利水準が続いている時は得。 |
段階金利型 |
ローン開始から一定期間は通常より低い
金利が設定される。
それ以降の金利は若干上がる。 |
借入時点で段階的に上がる金利は固
定されているので返済計画が立て易い。
借入当初の金利負担は少ない。 |
変動金利
タイプ |
変動金利型 |
一定期間ごとに金利が見直される。
民間ローンの金利は、通常半年ごとに見
直されるが、返済額は5年ごとの見直し。 |
借入時点で返済額が分らないので返済
計画が立て辛い
高金利水準が続いている時に得。 |
固定金利
選択型 |
借入から一定期間(3年、5年など)は、
固定金利。それ以降は変動金利、または
変動か固定の選択可能なタイプもある。 |
金利は見直されので返済計画が立て
辛い。低金利水準時は固定金利の期間
が長いほど得。 |
金利ミックス
タイプ |
|
文字通り、固定金利と変動金利をミック
スした金利タイプ。 |
金利リスクの分散効果が期待できる。 |
変動金利のうち、民間ローンの金利は、一般的に半年毎に見直され、返済額は利率に変動があっても5年間変わらない。そして、その期間の金利変更による返済増減額は次の5年間でその差額が調整される。ただ返済額の急増による家計の負担を考慮し、返済額に一定のキャップを掛けているのが一般的だ。
たとえば、民間ローンの場合は、直前の返済額の1.25倍までを上限。また財形住宅融資の場合、金利および返済額の見直しのタイミングは、どちらも5年毎で、1.5倍までを上限としている。
上限設定とはいっても、仮に返済額が上限を超えた場合、その部分は未払い利息(利用者の債務)として、利用者に支払義務が将来発生する。この点は注意が必要だ。
【金利トレンド別ローン金利タイプの選択の目安】
※筆者作成 変動金利タイプの固定金利選択型は固定金利適用期間後の金利が固定か変動かを選択できる場合を表している。
住宅ローンの返済方法については、それぞれにメリット、ディメリットがあるが、大きく分けて元利均等返済、元金均等返済、元金据置型返済などの方法がある。一般的には元利均等返済と元金均等返済の二つのタイプの利用が多い。
【返済方法の特徴とポイント】
返済方法 |
主な特徴 |
ポイント |
元利均等返済 |
毎回の返済が一定額で、
元金と利息の割合が変動
する。
利用者が最も多い返済方法。 |
返済額が一定であること
から返済計画が立て易い。
スタート時の返済額が元金
均等返済と比べ少ない。
※総返済額は元金均等返済
と比べ多い。 |
元金均等返済 |
元金部分は元金額を返済
期間で按分して毎回均等に
返済する方法。
|
当初の返済額は多いが、
返済期間が経過する毎に
返済額が減少する。
※総返済額は元利均等返済
と比べ少ない。 |
返済総額の比較はシュミレーションの前提条件を元金10,000,000円、固定金利:2.5%、返済期間:25年とした場合、下表の通り、元金均等返返済総額の方が少ない試算となる。
ちなみに借入当初の返済額は、初年度比較において、上と同じ条件で元利均等返済が年額538,300円、元金均等返済が649,200円。
よって返済当初の負担を軽くしたい場合は元利均等返済が、返済総額を抑えたい場合は元金均等返済が、それぞれ有利だ。
【元利均等返済と元金均等返済の返済総額の比較(参考)】
返済方法 |
元 金 |
支払金利総額 |
総返済額 |
元利均等返済 |
10,000,000円 |
3,458,500円 |
13,458,500円 |
元金均等返済 |
10,000,000円 |
3,135,400円 |
13,135,400円 |
差 異 |
0円 |
323,100円 |
323,100円 |
希望するローン借入額、金利のタイプ、返済期間などが一応決まったら、次のステップは各金融機関の“住宅ローン”或は住宅金融支援機構と民間金融機関が提携し販売している“フラット35”などのローン概要について、ネットや資料請求などで情報を複数入手する。
更にそれらを比較検討し希望に沿った、或は希望に最も近い商品と利用する金融機関を探し出すことだ。
住宅ローンを利用するための要件について、下表を例に比較してみる。
先ず、下表の金融機関は一例として記載している。よって“どのローンをどこの金融機関で借りるのか”それを検討する際は、ここに載っている以外の金融機関についても調べることが必要だ。
■融資金額
融資金額の上限は、一般的に民間ローンで地方銀行が5千万円、都市銀行が1億円、フラット35(買取型)で最高8千万円と、それぞれ融資金額にバラツキがあるので、希望の融資額に合ったローン商品および金融機関を選ぶことだ。
■資金の使い道
融資対象は住宅の新築・購入・増改築、宅地購入、借換えなどが一般的だ。
中古物件はマンションだけが対象。店舗併用住宅は対象でも住居に占める面積が全床面積の過半数以上であること。またフラット35はリフォーム資金の利用が出来ない。というように金融機関・ローン商品によって特徴がある。
■返済期間
返済期間は一般的に最長35年がほとんどだが、借換えや中古住宅購入の場合は取り扱いが異なる場合があるので注意が必要だ。
■返済方法
元利均等返済、ボーナス併用は、ほとんどの金融機関が扱うローン商品にも共通している方法だ。その特徴は、前述の通りなのでその内容は割愛する。しかしボーナス併用については、今の様な経済状況に加え、企業業績に影響されるリスクを考慮し、この比重を極力減らすことが得策だ。
■金利
利用者にとって、低い金利を求めるのは当然のことだ。だが、それぞれの優遇後金利のレートが最も低いからといって、必ずしも融資に関わる総返済コストが少なくなるとは限らない。それは融資に関連する手数料、特に保証料などを合わせて計算しないと損得が分らない場合もあるからだ。
先ずは、変動や固定などの金利タイプを選択したら、希望する幾つかの銀行などで試算してもらうことも必要だ。
■手数料
ローンに関わる手数料は、借入時の融資事務手数料、ローン保証料、団信保険料、繰上げ返済手数料、期限前完済手数料などがある。そして、これらの料金は金融機関毎に異なる。
そのうち保証料は、無料の銀行もある。有料の場合については、支払が一括前払型と利息組込型(一般的には年0.2%)の2つの方法から選択できるところが多い。 この保証料は他の手数料と比べ多額なので、融資額が決まったら総額を把握しておくことが大事だ。
現在の年収水準を基に利用可能なローン金額が分っても、各金融機関が定めている融資要件や審査基準を満たしていなければ、住宅ローンの借入は実現しないことになる。
マイホーム取得の一手段として、ローン借入の実現に少しでも近づけるために、次のポイントは是非抑えておきたいが、一番重要なのは返済能力に審査の視点がおかれていることだ。
●年齢
完済時の年齢や申込み時の年齢であるが、これはローン返済期間とも繋がってくる。
民間ローンの場合は完済時年齢が75歳または80歳誕生日までが一般的である
この基準は金融機関毎に異なるが、これを満たしていればこの条件はクリアーされる。
●年収と返済負担率
これも大きいポイントだが、下表の通り各金融機関が定めている年収基準を満たせば借入枠の第一関門は超えられる。
その他の要件には、過去の年収がある。つまりその額が過去においても現在と同じ水準か、例えば毎年その額の増減幅が大きい場合、金融機関としてもどの時点の年収額を基準とするか判断し難いと考えられる。従って、年収は安定していることが大前提だ。この点では自営業者より年収額が比較的変化しないサラリーマンなどが有利とされる。
年収が安定してない場合、その理由が明らかであれば金融機関に相談・説明をしておくことも必要だろう。
返済負担率は、前掲(年間返済額とローン上限金額のイメージ図)の通り、年収額に応じて負担率が変わる。年収額が高ければその率は上がり年間返済額も増加する仕組みだ。
限度額の視点では、民間ローンの場合、特に年収倍率、つまり年収額に対する借入限度額の割合(低いほど良い)、通常5,6倍で融資限度額が設定されるところが多い。借入限度額は、最終的に、この項目以外の要件も総合的に調査し決定されているようだ。
●融資金額
年収基準によって設定される借入限度額は、上述の通り必ずしも全額借入できる訳ではない。融資上限額の設定は上の項目以外にも幾つかの項目がある。
その一つに、フラット35で明確に謳っているように申請中の住宅ローンの他に、自動車ローン、教育ローン、カードローンなどを利用中の場合、融資枠はその債務額などの部分が減額される。
特に、クレジットカードを保有して、キャッシュローンの借入枠をカード会社と設定していれば、たとえ利用していなくても減額される。
減額されたくないと考えるなら、カードの保有枚数を減らすことやキャッシュローン与信枠の減額
或は設定なしにすることなどが必要な対策だろう。
その他、民間ローンにおいて、変動金利のタイプを選んだ場合、借入上限額の算出では現在の金利水準より数%(現在は4%の金利水準といわれている)高く設定されるようなので、融資金額は当然減少することになる。
民間ローンで変動金利型を選ぶ際は、この点注意が必要だ。
●不動産の担保価値
もう一つは、土地や建物の担保価値によって借入上限額が増減することだ。その評価方法は金融機関や保証会社によっても異なるようだ。
例えば、土地の場合は、売買価格又は相続路線価をベース(評価単価x敷地面積)に、建物は、売買価格又は地域・建物の構造などによって評価単価を算定(評価単価x建物面積)し、それに担保掛け目(物件価格に対する希望借入額の割合)を掛けた額が担保価値だ。
民間ローンの担保掛け目は80%が一般的に多い割合とされているが、100%の設定もあるようだ。
この割合は借入限度額に関係する。つまり、担保掛け目が80%の場合は頭金が物件価格の20%、100%は頭金ゼロとなる勘定だ。
●信用照会(クレジット・リファレンス)
この要件も大きなポイントで注意が必要だ。金融機関は利用者の過去の借金および返済状況についての記録を調査する。
具体的には、過去に自己破産した、消費者金融から借金している、消費者金融発行のカードを持っている、或は過去に公共料金などの支払で銀行残高不足により引き落としができない、カードローンやカーローンなどの支払を滞納したことがある、などの場合は、審査が通らないと考えるべきだ。
こういった債務不履行はブラック・リスト(融資不適格者リスト)に載せられ、その履歴は最低5年間消えないとも言われている。
●勤続年数
年収基準と同じく、勤続年数も重要だ。民間ローンの場合は、勤続1年以上から、3年以上(自営業も3年以上)が一般的だ。
●団信加入の条件
団信(団体信用生命保険)は、加入者が万が一死亡した場合、ローン残額の返済を補償する保険だ。保険料は民間ローンの場合、通常金融機関が負担(フラット35は利用者負担)する。「加入が認められる利用者」という意味は、利用者の健康状態によっては加入できない場合があるということだ。
●その他の融資要件
その他の要件のうち、主な項目は、正規・非正規などの雇用形態、勤務先の規模、業種などが挙げられる。これらについては、詳細な基準は開示されていないので定かでないが、審査の重要度は上で記載した要件より低いともいわれている。
【ローン商品の概要(参考)】 |
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|
2012年11月1日現在 |
要 件 |
ソニー銀行
(ネットバンク) |
東京三菱UFJ
(都市銀行) |
東京都民銀行
(地方銀行) |
JAバンク |
ろうきん
(中央労働金庫) |
利用が
可能な方 |
返済年齢 |
20歳〜65歳未満
完済時80歳誕生日 |
20歳〜70歳誕生日
完済時80歳誕生日 |
20歳〜70歳誕生日
完済時75歳以下 |
20歳〜66歳未満
完済時80歳未満 |
20歳〜完済時
76歳未満 |
※収入基準 |
前年度年収
400万円以上 |
記載なし |
前年度年収
250万円以上
勤続3年以上 |
前年度年収
150万円以上
勤続3年以上 |
年収150万円以上
勤続1年以上
(自営業3年以上) |
団体信用
生命保険 |
団信に加入が認めら
れる利用者。
(保険料は銀行負担) |
団信に加入が認めら
れる利用者。
(保険料は銀行負担) |
団信に加入が認めら
れる利用者。
(保険料は銀行負担) |
団信に加入が認めら
れる利用者。
(保険料は銀行負担) |
ろうきん団信と3大
疾病団信と2つから
選択可。 |
※その他 |
日本国籍者、永住権
のある外国人 |
日本国籍者、永住権
のある外国人 |
日本国籍者、永住権
のある外国人 |
JAの組合員、
組合員資格には
出資金1万円要 |
ろうきん出資団体の
構成員、友の会入会
の個人会員 |
※融資金額 |
|
500万円〜1 億円 |
30万円〜1 億円 |
100万円〜1 億円 |
10万円〜5000万円 |
30万円〜1 億円 |
資金の使途 |
|
住宅の新築・購入・
増改築、宅地購入、
中古マンション購入、
借換え |
住宅の新築・購入・
増改築、
借換え |
住宅の新築・購入・
増改築、宅地購入、
※店舗併用住宅も可、
借換え |
住宅の新築・購入・
増改築、宅地購入、
借換え |
住宅の新築・購入・
増改築、宅地購入、
リフォーム資金 |
返済期間 |
|
1 年〜35年 |
2年〜35年 |
35年以内 |
3年〜35年 |
最長35年 |
※返済方法 |
|
元利均等返済
(ボーナス併用可) |
元利均等返済、
元金均等返済
(ボーナス併用可) |
元利均等返済
(ボーナス併用可) |
元利均等返済、
元金均等返済
(ボーナス併用可) |
元利均等返済
(ボーナス併用可) |
※金利の
タイプ |
変動金利型 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
固定金利型 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
その他 |
|
固定特約金利型 |
|
固定変動選択型 |
固定変動選択型 |
※金 利
(優遇後金利) |
変動金利 |
1.172% |
0.875% |
1.275% |
0.975% |
1.075% |
※固定金利 |
0.976%〜2.340% |
1.050%〜1.350% |
1.850%〜2.350% |
1.000%〜 |
0.950%〜2.200% |
事務手数料 |
|
42,000円 |
31,500円 |
31,500円 |
10,500円 |
10,500円 |
一部繰上げ
返済手数料 |
|
無料 |
5,250円〜15、750円
+保証会社手数料:
3,150円 |
0円〜52,500円 |
2,100円〜
条件変更時3,150円 |
一部繰上は無料、
期限前完済は0円
〜31,500円 |
※その他
手数料 |
|
- |
期限前完済:
10,500〜21,000円
+8,400円 |
条件変更時
5,250円 |
- |
3大疾病団信保険料
は年0.3%金利に
上乗せ |
※保証料 |
一括前払型 |
無料
(保証人も不要) |
19万円〜76万円 |
〜20万円 |
〜22万円 |
〜21万円 |
利息組込型 |
0円〜57万円 |
年0.2% |
- |
年0.14%〜0.36% |
※は特に要件を抜粋して表示しており、他にも条件・金額・レート等がある。上の銀行等は一例なので、詳細については各金融機関に照会ください。
※保証料は、ローン金額1千万円、返済期間30年とした保証料を例示している。保証料はローン金額、期間、返済方法、年収:返済額比、保証料支払方法により金額が異なる。 保証料が掛る場合は保証人不要が一般的。
※返済方法のうち、ボーナス返済は3ヵ月毎、融資額の50%以下の返済が一般的。 |
◇フラット35の特徴
フラット35とは、住宅金融支援機構(前身は住宅金融公庫)と民間金融機関が提携して販売している住宅ローン商品で、殆どの金融機関が取り扱っている。
フラット35は買取型と保証型の2つのタイプがある。保証型の取扱金融機関は東京三菱UFJや千葉興業銀行など5行だけで、買取型の方が圧倒的に多く利用されている。
買取型の仕組みは、まず住宅金融支援機構は金融機関から“住宅ローン債権”を買い取るため、信託銀行などにその債権を信託し、それを担保として資産担保証券(MBS)を発行する。それによって債券市場からその資金を調達するというプロセスである。
フラット35の特徴的なことは、融資要件のうち、住宅技術基準(住宅性能)や床面積などの住宅に関連する条件が明確に定められている。
民間ローンで不利な自営業者も継続事業年数や安定した収入などの条件を満たせば下り易いともいわれている。
またコスト面では、下表の通り金利のタイプが全期間固定金利、保証料や一部繰上げ返済手数料が無料。
その一方、団信(団体信用生命保険)の保険料(特約料)は利用者負担であること。更に融資(事務)手数料は定額と定率の2種類あるが、定額は3万円〜5万円で済むところ、定率では融資額x2.1%、仮に融資額が3千万円の場合においては630,000円と大きな差となる。
よって、金融機関を選ぶ際はこれらの手数料と金利水準をそれぞれ比較・検討し、総合的に判断することが必要だ。
新築や購入物件が省エネ・耐震性住宅ならばフラット35Sが得だ。これは省エネ性や耐震性などの要件を満たし、住宅金融支援機構が定める技術基準に適合した住宅取得に利用するローンで、平成24年11月1日から平成25年3月末までの暫定措置としてスタートしている。
特徴としては、フラット35の金利を一定期間引き下げる制度で、金利Aプランが当初10年間、金利Bプランが当初5年間、それぞれフラット35の金利から0.3%引き下げる優遇措置となっている。
その他、フラット35の系列商品となるフラット50もある。これは長期優良住宅に認定されることが条件だが、返済期間は最長50年、親子2代の返済が可能(親子リレー返済)で、融資金額は6千万円、限度額は物件価格の60%以内、フラット35と併用すれば100%、金利はフラット35より高いが、35Sと同じ金利優遇措置がある。
この損得を判断する材料としては、下表の通り比較的高額な手数料を金利に当て嵌め、実質金利に引き直して見ることだ。
例えば、フラット35は融資手数料が定額ならば民間ローンとほぼ同じ水準だが、定率の場合、約0.5%(融資手数料(定率)+団信保険料(特約料))が適用金利に上乗せになる勘定だ。
一方、民間ローンは保証料のうち一括前払型を選択した場合、約0.15%、利息組込型の場合、約0.2%それぞれが適用金利に上乗せされる。
尚、保証料の一括前払型と利息組込型のコストを比較した場合は、一括前払型の方が断然安い。
このようにコスト面で比較する際は、これらのコスト項目を確認し、実質金利で見ることが大事だ。ただ前述のように、フラット35の金利タイプは全期固定金利なので、事前に金利が確定しているが、民間ローンの固定金利型は、その特約期間(その期間の金利は固定)が最長でも20年間が多く、それ以降の金利は変わる。
よって返済期間が20年以内の場合は単純比較が可能だが、それ以上の場合は、ここをどう予測するかによって判断が分かれるところだ。
ただ、20年先のことは誰も正確には分らない。例えば、今の金利が過去の推移から見て低い水準ならば、仮にフラット35の実質金利が民間ローンと比べて若干高くてもフラット35を選んだ方が得策といえる。
また仮に民間ローンの固定金利型を選択した場合でも、特約期間終了時点で金利水準が上昇局面であれば金利タイプを固定に、下降局面ならば変動に見直しすることが可能なローンもあるので、この点については安心だ。
審査については、フラット35の場合、融資額の設定基準が年収額や勤続年数等の定められた基準を満たしていれば比較的それに沿ったローン金額が借りられるようだ。この点では民間ローンの方が厳しいようだ。
【フラット35と民間ローン商品のコスト比較(目安)】 |
(単位:千円) |
主な手数料 |
フラット35 |
民間ローン |
備 考 |
融資事務
手数料 |
定額 |
40 |
32 |
|
定率 |
210 |
- |
融資額x2.1% |
保証料 |
無料 |
一括前払型 |
200 |
|
利息組込型 |
304 |
年率0.2% |
団信 |
590 |
無料 |
金利レートは
1.53%で試算 |
手数料計 |
800 |
304 |
(例)融資金額が3千
万円の場合は3倍 |
金利換算 |
約0.5% |
約0.2% |
手数料を金利
換算した場合 |
※試算条件:融資額1000万円、返済期間30年、元利均等返済 |
【金利と支払金利総額(参考)】(単位:千円) |
金利 |
1000万円 |
2000万円 |
3000万円 |
0.1% |
151 |
302 |
454 |
0.2% |
304 |
608 |
911 |
0.3% |
458 |
916 |
1,374 |
0.4% |
614 |
1,227 |
1,841 |
0.5% |
771 |
1,542 |
2,312 |
1.0% |
1,579 |
3,158 |
4,737 |
1.5% |
2,424 |
4,849 |
7,273 |
2.0% |
3,306 |
6,612 |
9,919 |
2.5% |
4,224 |
8,449 |
12,673 |
3.0% |
5,178 |
10,355 |
15,533 |
試算条件:返済期間;30年、元利均等返済 |
【ローン商品(フラット35)の概要(参考)】 |
2012年11月1日現在 |
要 件 |
フラット35 |
備 考 |
利用が
可能な方 |
申込時年齢 |
|
|
※70歳未満 |
※親子リレー返済の場合は
70歳以上も可 |
借入上限額 |
年収 |
基準 |
※他のローンがある場合、
それらを合算した年間返済額が
基準額を満たすことが条件 |
フラット35以外の住宅ローン、
自動車ローン、、教育ローン、
クレジットカードローン等を指す。 |
400万円未満 |
〜30% |
400万円以上 |
〜35% |
団体信用
生命保険 |
任意加入。
3大疾病団信の加入も可。 |
健康状態により加入
の可否が判断される。
(保険料は利用者負担、毎年支払) |
保険料総額は、約180万円
(借入金:3千万円、2%、30年の場合) |
その他 |
|
|
日本国籍者、永住権
のある外国人 |
|
融資金額 |
|
|
100万円〜8,000万円 |
建設費・購入価格の90%以内 |
資金の使途 |
|
|
本人または親族が住む
ための住宅の新築・購入・
増改築、宅地購入、中古住宅購入、 |
リフォームの資金は利用不可。 |
住宅に関する要件 |
一戸建て住宅 |
70u以上 |
・住宅金融支援機構が定めた
技術基準に適合することが条件。
・土地取得費も含む。
・敷地面積の要件はない。 |
マンション等 |
30u以上 |
店舗付住宅 |
住宅部分の床面積が店舗等の
床面積以上 |
返済期間 |
|
|
1 年〜35年 |
※【年齢によるローン返済期間表】
に記載の通り。 |
返済方法 |
|
|
元利均等返済、元金均等返済
(ボーナス併用可) |
|
金利のタイプ |
全期間固定金利 |
ローン借入期間中の金利は一定。 |
|
金 利 |
借入期間 |
20年以下 |
1.850%〜2.800% |
・取扱の金融機関によって異なる
・融資資金受取時の金利が適用 |
21 年〜35年 |
1.570%〜2.520% |
事務手数料 |
|
|
定額:3万円〜5万円
定率:融資額x2.1%、等 |
取扱の金融機関によって異なる |
物件検査手数料 |
|
新築住宅:2万円〜3万円
中古住宅:4万円〜6万円 |
検査機関などにより異なる
(適合証明書が必要) |
一部繰上げ返済手数料 |
返済金額は100万円以上 |
無料 |
|
保証料 |
|
|
無料 |
保証人は不要 |
・この表は要件を抜粋して表示しており、他にも条件・金額・レート等があるので、詳細についてはフラット35を取り扱っている金融機関に確認ください。
・団体信用生命保険:夫婦連生団信(デュエット)は1.56倍の保険料が掛る。
|
正確な融資額は、希望する銀行などにローン申請し、審査が通って始めて
確定するものなので、ここでは、飽くまでも目安としていただきたい。
つまり上限額の全額が借入できるとは限らないということで、これについては
前述の通り注意が必要だ。試算したローンの上限額が分り、条件に合った借入先
やローン商品を探すことができたら、次は希望する物件の価格とローン上限額を
比べてみることだ。
ローン商品は下表の通り、借入限度額が設定されている。借入上限額が希望
する物件価格の80%〜90%以下であれば、借入限度額はクリアされたことに
なる。
仮に、希望の物件価格が4000万円で、試算した借入上限額が3500万円の
民間ローンを利用するとした場合、借入限度額は3200万円(4000万円x80%)
となる。
ということは、銀行からの借入額は3200万円までなので、物件価格からは
800万円、上限額からは300万円それぞれ少ない計算だ。
【借入限度額の比較】
住宅ローン |
借入限度額 |
民間住宅ローン |
物件価格x80% |
フラット35 |
物件価格x90% |
財形住宅融資 |
物件価格x90% |
※フラット35は買取値型、保証型は100% |
※フラット35(買取型)+財形住宅融資 |
の場合は合わせて物件価格x100% |
◇購入時にかかる住宅コスト
住宅取得に関わる諸経費は、住宅ローンや物件取得時に掛るコストなどだが、
これらは前もって把握しておくことが肝心だ。つまり頭金と同様にこれらのコストは
自己資金で準備しなければならない。
まず、取得時にかかるコストは、下表の通り物件の購入および借入条件の
モデルケースを基にコストとその試算過程を表示しているのでこれを参考にして
いただきたい。
<物件の取得およびローンの条件>
・建物の構造および土地・建物の面積: 建物:木造2階建:120u ・土地:敷地
面積:155u
・物件価格: 建物:2500万円(消費税含む)、土地:1500万円(消費税は掛らない)
・ローン金額:3200万円 30年返済
【住宅取得時に掛るコスト(目安)】 |
費用項目 |
金 額 |
摘 要 |
@ |
登録免許税 |
21万円 |
土地(移転登記)・建物(保存登記)・抵当権などの登記申請 |
A |
不動産取得税 |
0万円 |
物件価格等によっては非課税 |
B |
印紙税 |
3.5万円 |
住宅ローンの契約、建設工事等の請負契約等 |
C |
登記手数料 |
4〜10万円 |
司法書士等に支払う手数料で、司法書士や物件により異なる |
D |
※仲介手数料 |
120万円 |
不動産業者等により異なるが物件価格の3%以内が一般的 |
【ローンに関わる主なコスト(目安)】 |
|
|
|
費用項目 |
フラット35 |
民間ローン |
備考 |
|
融資事務
手数料 |
定率 |
672千円 |
- |
- |
一括払い |
定額 |
40千円 |
定額 |
32千円 |
|
保証料 |
無料 |
一括前払型 |
利息組込型 |
|
640千円 |
973千円 |
|
団体信用
生命保険 |
※年額 |
総額 |
無料 |
※初年度
の支払額 |
115千円 |
1,887千円 |
E |
火災保険 |
145千円〜670千円 |
145千円〜670千円 |
保険会社や
補償内容で異なる |
|
|
|
|
|
|
|
【その他のコスト(目安)】 |
|
|
|
費用項目 |
コスト |
備 考 |
F |
引越費用 |
100千円〜200千円 |
|
G |
耐久消費財の購入 |
175万円 |
マンション・建売住宅:118万円 |
※出所:住宅金融支援機構の住宅取得に係わる消費実態調査 |
住宅取得時にかかるコストは、コストミニマムで約2百万円、物件価格の約5%、
更に火災保険(フルセットで加入)、仲介手数料を含めたコストマキシマムで
約4百万円、物件価格の約10%を目安として自己資金を準備しておきたい。
@
登録免許税
不動産登記は、住宅を購入した場合などに、不動産の所有権を第三者に
対して明らかにするため法的な帳簿(法務局が扱う)に記録する際に掛る
税金をいう。
このケースの場合は、建物、土地、住宅ローンを利用する場合の※抵当権
設定の3つに対して税金が掛る。
・建物所有権の保存登記: 15,480円(1,032万円x※0.15%)←(120ux
86,000円)
課税標準額(1,032万円:税額計算のベースとなる価額)は土地や建物の
場合、市町村役場が管理している固定資産課税台帳に登録されている
価格となる。
しかし建物の場合、購入時点では固定資産課税台帳に載っていないため
下表の基準表を基に課税標準額が計算される。
※この料率は平成25年3月末までの軽減措置、通常は0.4%.
【新築建物課税標準価格認定基準表】(単位:¥/1u) |
項 目 |
居宅 |
共同住宅 |
木造 |
86,000円 |
85,000円 |
軽量鉄骨造 |
97,000円 |
97,000円 |
鉄骨造 |
115,000円 |
115,000円 |
鉄筋コンクリート造 |
139,000円 |
139,000円 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 |
154,000円 |
154,000円 |
※平成24年度、東京法務局管内 |
・土地所有の移転登記: 157,500円(1,050万円x※1.5%)←(1500万円x
70%)
土地の課税標準額(1,050万円)は売買価格を公示地価と見做し、原則的
には公示地価の70%がそれに当たる。
※この料率は平成25年3月末までの軽減措置、通常は2.0%.
・※抵当権設定登記: 32,200円(3,200万円x※0.1%)
抵当権設定における課税標準額は債権額・極度額であるため、借入額が
それに当る。
※抵当権とは、例えば、銀行から住宅資金を借りた場合、その返済が終わるまで、銀行は貸した
お金と引き換えに、その担保として、銀行は利用者が借入債務を完済するまで物件の所有権を
一時的に預かる権利を持つことをいう。しかし使用(居住)する権利はキチット返済している間は、
借りた人にある。
@
不動産取得税
不動産取得税については、減税措置適用の有無によって大きく異なる。その
条件は、新築住宅の取得、中古住宅の取得、土地を先取得し、後に住宅を
新築するなどの場合とそれぞれに設定されているので事前に確認願いたい。
建物: 0円 ((1,032万円-1,200万円)x3%)←(固定資産税評価額-
1,2000万円)x3%
課税床面積は50u以上(戸建以外は40u以上)240u以下
土地: 0円 (1,050万円x1/2x3%)- 31.5万円←(固定資産税評価額x
1/2x3%)-※控除額
※控除額は平成26年3月末までの特例で、計算式は、(1)と(2)のいずれか
大きい方の額
(1)45,000円、
※(2)(A
x B x 3%) A: 固定資産税評価額/u x 1/2、 B:住宅の
床面積 x
2(200uまで)
A
印紙税
印紙税は、住宅を購入する時の売買契約書、住宅ローンを組む時の金銭
消費貸借契約書、建設工事の時の請負契約書などを交付する際にかかる
税金で、契約書などに印紙を貼り付け消印することで納付となる。
住宅ローンの契約書の場合は借入金額が1000万円超〜5000万円以下が
20,000円(特例措置はない)、売買契約書の場合は、このケースの場合、
15,000円(平成25年3月末までの特例措置、通常は20,000円)となる。
住宅ローンを複数の金融機関で組んでいる場合などは、課税文書が増える
ことになり、その分だけ印紙代がかかる勘定となる。
B
登録手数料
登録手数料は、土地・建物の不動産登記、抵当権の設定を申請に関わる
司法書士などに支払う報酬がこれに当たる。以前は報酬基準が一律だった
が、現在は規制緩和で撤廃されているため事務所によって報酬額にバラツキ
が見られる。場合によっては複数の事務所に値段を確認することも必要かも
しれない。
C
仲介(媒介)手数料
不動産業者が不動産物件を所有し売主として直接販売する場合はこの
手数料はかからない。
仲介手数料は、売買の媒介の報酬限度額が法的に定められており、物件
価格が400万円超の場合、物件価格の3.15%+6.3万円が報酬限度額
(消費税込み)となる。このケースの場合は、物件価格が3880万円(計算上
この物件価格は消費税抜き)なので128.5万円となる。
しかし、この報酬限度額を手数料としている不動産業者はそう多くないと
思われるが、それについては、パンフレットや新聞などの広告で記載されて
いる取引態様の表示内容、例えば、媒介・仲介と記載されている場合は、
事前に業者へ確認しておくことが望ましい。
E 火災保険
建物に対して長期火災保険を付保することが条件で、金融機関によって
異なるが、更に銀行(実際には銀行の保証会社)を質権者とする第一順位
の※質権設定をする場合がある。
保険料についいては、保険会社やその補償内容によって料金が大きく異なる。
例えば上記ケース(30年間、建物価格2500万円)で、建物・家財の基本補償
(火災、落雷、破裂・爆発)だけ加入する場合は、一括払い約145千円、年払い
約7千円だが、これに※地震保険、風災、水害、水漏れ、盗難、特約の個人
賠償などをセットとして加入すると一括払い約67万円、年払い約55千円。
但し地震保険は1年分27.5千円(この保険料は全保険会社一律で保険期間
は最長5年間)のみ含んでいるため、これを全期間(30年)加入とした場合、
総支払額は約150万円となる。
※地震保険は火災保険とセットのみ加入可能で、単独での加入はできない。
※質権とは、例えば、銀行から住宅ローンを借りて購入した家が火災で焼滅した場合、銀行は融資
物件が無くなることで貸しているお金が返済されないリスクが起こる。それを担保するため、その
銀行からお金を借りた人から加入した保険証書を預かり、万一の場合、銀行はローン残額を保険
会社から受取る権利をもつことをいう。また第一順位の質権設定とは、保険会社から受取る権利の
順位が一番目であることをいう。
F
引越費用
引越費用は、業者、引越荷物の量、引越時期(3月などの繁忙期および土日
や祝祭日は高い)、運送距離、ピアノや車の運搬、家電の取り外し、取り付け
などのオプションサービスなどによって異なる。この費用を節約するためには、
なるべく複数の業者(ネットなどにコスト比較のサイトがあるのでそれを活用
する方法もある)から見積をとって比較することが必要だ。
ただ安いだけで選ぶと、取扱が雑、荷物の紛失などのトラブルが起こる
可能性もあるのでその点は慎重に見極めることが肝心だ。
G
耐久消費財の購入
新居での生活は、家具や家電製品も新しくしたいものだ。住宅金融支援機構
の調査によると一世帯当りの平均購入額は一戸建ての場合、総額約175万円。品目別では、カーテン、照明器具、エアコン、テレビ、応接セットなどの順で新規購入
が多いとされている。
ただ上述の通り、あれもこれもと揃えると結構な金額になってしまうので、
必要な品目の優先順位付けと自己資金額とのバランスを考慮し計画的に買
い揃えていきたいものだ。
住宅ローンを借入限度額一杯(物件価格の100%)に借入れたとしても、
後の返済がその分大変となる。借入後の返済負担を軽減するためには、
できるだけ借入金額を抑えるべきだ。
つまり、そのためには出来るだけ多くの自己資金があるに越したことはない。
●住宅資金の積立商品
主な住宅積立商品は、住宅積立貯金、住宅債券積立(つみたてくん)、財形
住宅貯蓄の3つだが、住宅積立貯金は平成19年に新規積立の申込み中止。
住宅債券積立は平成17年から新規募集は行われていないので、現在は
財形住宅貯蓄だけとなっている。
財形住宅貯蓄の特徴は、サラリーマンだけが対象で、給与天引きによる積立、
利子が非課税(財形年金貯蓄と合わせて元利合計550万円まで、保険型は
払込み保険料550万円まで保険差益が非課税などだ。この商品はほとんど
の金融機関で取り扱っている。
その他、利用者の年齢(申込み時55歳未満の勤労者)、積立期間(5年以上、
5年未満でも持ち家取得目的の払い出しは可能)、面積要件(床面積50u以上)
などの要件がある。
(財形持家融資制度)
この財形住宅貯蓄の他、一般財形貯蓄、年金財形貯蓄を行っている人を
対象に住宅融資が受けられる制度がある。
その要件は、勤め先に財形貯蓄制度があることが条件だが、財形の種類は
問わず、1年以上の積立、貯蓄残高が50万円以上で、物件価格の80%以内
で、貯蓄残高の10倍以内(最高4000万円)の融資が受けられる。
●金融商品の投資
金融商品の運用を考える場合、住宅をいつ頃取得するか、自己資金は
いくら準備するかだが、計画した時点で、目標額にもよるが取得までの
期間が10年以上の場合は、長期的視野に立って準備できるため、経済
状況の変化を考慮し、リスクレベルの高い金融商品の運用も検討に値する。
とは言っても、金融商品の選択においてある程度の安全性の確保を考える
ことは必要だ。
具体的な商品としては、教育資金で述べたように公社債投信、株式投信、
ETFなど毎月一定額の積み立てと、収益分配金があるファンドならば、
それを再投資するやり方も試みたい。
また今は、安倍政権に代わってから円安が急速に進んでいる状況だが、
今後も「中長期的には円安」と予想されている。豪ドル・米ドルなどの外貨
建て預金や外貨建てMMF等で運用するのも一つの選択肢かもしれない。
●住宅資金贈与の活用
この制度は親や祖父母からの住宅資金援助が可能な人にとっては積極的
に活用すべきだ。
具体的には20歳以上(贈与年の1月1日時点で20歳となっていることが条件)
の子や孫が親や祖父母(直系尊属)から住宅取得資金を受けた場合は、
一定額の贈与税が非課税となる。
通常の贈与税の場合は、1,000万円を超えると50%の税率となるのでこの
制度はかなり有利だ。
しかし、この制度の適用期限は平成26年末となっているので、これ以降、
この制度の行方をウォッチしていく必要がある。
【住宅資金の非課税額】 |
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住宅の種類 |
贈与年毎の非課税額 |
平成24年 |
平成25年 |
平成26年 |
省エネ、耐震性住宅
を備えた住宅 |
1,500万円 |
1,200万円 |
1,000万円 |
1,500万円 |
1,500万円 |
上記以外の住宅 |
1,000万円 |
700万円 |
500万円 |
1,000万円 |
1,000万円 |
基礎控除 |
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110万円 |
110万円 |
110万円 |
※平成25および平成26の下段は東日本大震災で住宅が滅失した場合に適用される。 |
※事例:平成25年2月に親から住宅取得資金1,500万円の贈与を受けた場合
の贈与税額は19万円となる。
1,500万円-(1,200万円+110万円)=190万円 ⇒ 190万円x10%=19万円
●相続時精算課税制度の活用
この制度は親からの住宅取得資金(2500万円までは非課税)を受けた際
には贈与税は一切掛らず、贈与者である親の相続発生時に贈与財産として
加算される仕組みとなる。従って贈与税の支払が相続税として先送り
される形だが、課税の目安としては親の財産額が※基礎控除額(法定相続人
x1000万円+5000万円、但し減額される(課税強化)見通し)を超える場合
だけので、親の相続額によっては相続税もかからない。
この制度の適用要件は、贈与者は65歳以上の親(祖父母は対象外)、
受贈者は20歳以上の子(年齢の定義は住宅資金贈与と同じ)、この制度を
一度選択すると暦年課税制度(110万円の基礎控除)に戻れない、前年の
合計所得(給与の場合:給与収入-給与所得控除)が2000万円以下(住宅
資金贈与も同じ)などである。
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