2.医療保険に入る前に 知っておきたい「高額療養費制度」T
3.「高額療養費制度 支給を受けるための要件について」U
4.「高額療養費制度 世帯合算・多数回該当について」V
5.「高額療養費制度 支給申請の手続きについて」W
介護保険からの給付については、サービスを受けた利用者がその費用の1割を
負担することが原則となっています。
介護サービスは、訪問介護やデイケアなどの「在宅サービス」と介護施設に入所
する場合の「施設サービス」に区分されています。
(在宅サービスに関する自己負担)
ここで注意したいのは、実際に掛った介護費用の1割が自己負担となるのではなく、下表のとおり、上限月額を超過した場合は、超過分すべてが自己負担となることです。
例えば、要介護3と認定された利用者で、1か月の介護費用が35万円掛った場合
の自己負担額は次の通りです。
350,000円(実費) - 267,500円(利用限度月額)= 82,500円@
267,500円(利用限度月額) x 10% = 26,750円A
この月の自己負担額は、@+Aの109,250円 となります。
在宅サービス支給限度額 (単位:円)
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要支援1 |
要支援2 |
|
|
|
利用上限月額 |
49,700 |
104,000 |
|
|
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要介護1 |
要介護2 |
要介護3 |
要介護4 |
要介護5 |
165,800 |
194,800 |
267,500 |
306,000 |
358,300 |
その他、福祉用具購入費は年間10万円を限度額とし自己負担は1割、
バリアフリーなどの住宅改修費は20万円を限度とし自己負担は1割となっています。
(施設サービスに関する自己負担)
施設サービスについては、要介護1〜5の利用者が要介護度に応じて利用する
施設入所に関わる費用で、1か月の自己負担額は、施設の種類によって異なり
ますが、15万円前後が目安となります。
「医療保険やガン保険に加入して保障を充実したいけれど、毎月の保険料が
結構高く家計の負担が大きい」と感じている人は少なくないと思います。
そう思う人は、公的医療保険制度について知っておくと、現在加入又は これから
加入しようとする人にとって保険料の節約に役立ちます。
日本は「国民皆保険」といわれるように、全国民に対し健康保険の加入を
原則義務化している公的制度がありますが、自営業者や農林漁業従事者 など
が加入する国民健康保険、サラリーマンなどが加入する健康保険などは
医療機関などに掛かった医療費の原則3割が窓口負担となっています。
「高額療養費制度」は病気・けがで入院や通院で医療費が多額となった場合
の負担軽減策として国が定めている制度です。
【高額療養費制度の基本的な仕組み】
-----------------医療費 100万円------------------
--窓口負担30万円---
例:医療費が100万円、窓口で支払った額(3割負担)30万円の場合 自己負担
の上限額:80,100円+(1,000,000円-267,000円)x1%=87,430円 高額療養費として
の支給額:300,000円-87,430円=212,570円
このように、健康保険の3割負担により窓口で支払う額は30万円ですが、
この制度を利用することで、自己負担の上限額(この額以上は負担しなくて
よい金額)が87,430円となります。つまりこの場合、87,430円だけ自己負担を
すればよいということになります。
よって高額療養費として支給される金額は上の式のとおり212,570円となります。
次は「支給を受けるための要件について」そのA、「世帯合算・多数回該当」そのB、「支給申請の手続き」そのCで説明したいと思います。
次にこの制度を利用する際は、公的医療保険、年齢、所得、支給対象項目
などの支給要件を満たす必要があります。
●公的医療保険の加入者であること
健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者医療制度、共済組合
などに加入していることが必要です。対象者は、健康保険の場合、上記医療保険
の被保険者のほか配偶者や子供などの被扶養者も対象となります。 自分がどの
公的医療保険に加入しているかは保険証の「保険者名称」で確認 できます。
●1ヶ月単位で掛った医療費を纏めて申請
医療費の申請や支給は歴月単位(毎月1日〜月末日)としています。
月をまたいで治療した場合、合算しての申請ができないことはこの制度の欠点
でもありますが、医療機関が公的医療保険に対して医療費を請求するレセプト
(診療報酬明細書)が歴月単位に纏めているため、公的医療保険もこの仕組み
にあわせているためです。
●自己負担の上限額は加入者の年齢や所得によって異なること
まず年齢については、70歳以上と70歳未満とに区分されます。 所得については、
2つの年齢区分毎に、現役並み所得者、上位所得者、一般、低所得者などに区分
されます。
所得区分の判定は、療養を受けた月が1〜7月の場合前々年、8〜12月の場合
前年の所得が基準となります。
【70歳以上のケース】
所得区分 |
1ヶ月の自己負担上限額 |
外来 |
外来+入院 |
現役並み所得者※1 |
44,400円 |
80,100円+(医療費-267,000円)x1% |
一般 |
12,000円 |
44,400円 |
低所得者※2 |
8,000円 |
15,000円※3 24,600円※4 |
※1月収28万円以上、窓口負担3割の場合
※2住民税が非課税の場合
※3総所得金額がゼロ、年金収入のみの場合、
年金受給額80万円以下の場合
※4上記※3以外の場合
【70歳未満のケース】
所得区分 |
1ヶ月の自己負担上限額 |
外来+入院 |
上位所得者※1 |
150,000円+(医療費-500,000円)x1% |
一般 |
80,100円+(医療費-267,000円)x1% |
低所得者※2 |
35,400円 |
※1月収53万円以上の場合
※2住民税が非課税の場合
所得区分については、国保の場合は居住している市町村役場、健康保険の
場合は健康保険組合又は協会けんぽなどで確認ができます。
●支給申請ができる医療費の項目
窓口で支払った自己負担額、院外の処方代などは原則支給対象となります が、
「差額ベッド代」や「先進医療に関わる費用」などは対象外なので注意が必要です。
特に先進医療費については民間保険会社などの先進医療特約などに頼ら ざるを
得ないのが現状です。
その他、「医療費控除制度」で適用されている入院・通院の交通費や市販薬
についても対象外です。
●医療費の合算請求ができる
医療機関で複数の診療科で受診した場合、自己負担額の合計が自己負担限度額
を超える場合は合算請求ができます。 自己負担額が70歳以上の場合は窓口
で支払った額にかかわらず請求できます。 また70歳以下は2万1千円以上の
医療費(つまり一回分がその額未満の場合は 請求ができない)を纏めて請求が
できます。(世帯合算は次回で説明)
その@、そのAでは加入者一人当りについての説明でしたが、この制度は、
「世帯合算」や「多数回該当」などにより更に自己負担額が軽減する仕組みが
あります。
「世帯合算」では、一人が同じ月内で複数回受診する場合や同じ世帯の他の人
が同じ月内で受診し、それぞれが窓口負担した場合、それらの自己負担額を
一か月単位で合算できます。
但し留意点として、医療保険における「世帯」は住民票上の世帯の概念 と異なり
ます。例えば、一つの家族でも世帯主が加入している健康保険の 被扶養者の子
が大学進学のため親元を離れ、別居していても同じ世帯と見做さ れます。
その一方同じ世帯でも被扶養者である妻(例:協会けんぽに加入)が 夫
(例:健康保険組合に加入)と異なる健康保険に加入していれば別の世帯として
扱われ、「世帯合算」はできません。よって「世帯合算」は同じ医療保険のみ可能です。 また前述のとおり、70歳以上の人は、一回分の自己負担額の制限はありませんが
70歳未満の人はその額が2万1千円以上でないと合算できません。
またその世帯がどの所得区分に該当しているかの判定については、基本的に同じ 医療保険に加入している人の所得の合計額が適用される他、所得区分を判定する
期間は上述のように療養を受けた月が1月〜7月の場合は前々年、8月〜12月の
場合は、前年の所得が該当します。なお、これについては、カテゴリー毎に算定
方法 が異なりますので、詳細は、国保や後期高齢者医療保険の場合、居住している 市町村役場、健康保険は健康保険組合、協会けんぽなどに確認してください。
次は、「多数回該当」ですが、これは直近12ヵ月間で高額療養費の支給が
3回(3ヵ月)以上ある場合、自己負担額が4回目から更に安くなる仕組みです。
例えば、70歳以上の場合、現役並み所得者の自己負担額は44,400円まで
ですが、「一般」や「低所得者」の所得区分の場合は対象外です。 また70歳未満
の場合、上位所得者は83,400円、一般は44,400円、低所得者は 24,600円
となっています。
事例を挙げて説明すると次のようになります。 健康保険組合に加入する
被保険者Aさん45歳、妻Bさん40歳、Aさんの実母Cさん72歳 BさんとCさんは
被扶養者、この世帯の所得区分は「一般」と仮定」した場合。
【直近6ヶ月間の療養費自己負担額】
|
Aさん |
Bさん |
Cさん |
備 考 |
1月 |
入院:70,000円 |
0 |
外来:6,600円 |
- |
2月 |
入院:85,000円 |
外来:6,000円 |
外来:6,600円 |
高額療養費支給 |
3月 |
0 |
外来:6,000円 |
外来:3,500円 |
|
4月 |
外来:30,000円 |
入院:70,000円 |
外来:7,000円 |
高額療養費支給 |
5月 |
外来:30,000円 |
0 |
外来:8,700円 |
高額療養費支給 |
6月 |
0 |
外来:22,000円 |
入院:310,000円 |
4回目該当 |
このように高額療養費の支給は6月の時点で4回目となりますので、6月の
自己負担 額は332,000円(22,000円+310,000円)ですが、「多数回該当」
により高額療養費 として287,600円(332,000円-44,400円)支給されます
ので、この場合実際の自己 負担額は44,400円となります。
次はそのCは具体的な手続き方法についてです。
支給申請につきましては、現在加入している健康保険組合・協会けんぽ・ 市町村役場・共済組合などに「支給申請書」を提出または郵送します。
また医療費の支払については、「高額療養費貸付制度」がありますので、必要に
応じて利用できます。この貸付は無利息ですが、詳細については、加入している
公的医療保険により貸付要件が違いますので事前に確認が必要です。
支給申請の時効は、診療月の翌月の初日から2年間なので、その間に未申請
があれば過去に遡って申請できます。 また支給を受けるまでの期間については、
受診月からおよそ3ヵ月掛ります。
以上は、「支給申請書」を提出した場合ですが、入院などは一度に高額な医療費を
支払うのは家計にとってかなりの負担となります。その負担を軽減するため、
窓口 で支払う療養費は全額(3割負担)でなく、自己負担の上限額までを支払うだけで済む仕組み があります。更に平成24年4月より外来診療についても適用されるなど支援内容は拡充されています。
この取り扱いの手続きについては、事前に加入している公的医療保険に
「※所得区分の認定証」を発行してもらうことで適用が可能になります。
この利点は、一度に大金を用意する必要がなくなると共に、療養費が医療機関
や薬局に直接支払われるため、高額療養費の支給申請手続きが省略できます。
※この「認定証」の名称は、「限度額適用認定証」、「限度額適用認定・標準負担額減額認定証」(住民税が非課税の人)の2種類ありますが、年齢区分によって
取り扱いが異なります。 例えば、70歳未満の人は全員が交付対象となり、 70歳以上の場合は、住民税非課税の人が交付対象となります。 70歳以上の人は住民税非課税者を除き全員が交付不要ですので「認定
証」なしで上記制度が適用されます。
「高額療養費制度」の適用・支給を受けた後も、なお家計の負担が残る場合、
この他に更に支援を受ける制度があります。 これは高額医療と高額介護療養費
を合算した「合算療養費制度」で、 1年間に掛った医療保険と介護保険の自己負担
額を合計し、一定額を超 えた場合に超過額を支給する制度です。
この制度の詳細については、現在加入している公的医療保険に確認してください。
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